◆「雲上地盤の上に噂話の花が咲く(What They Talk About)」...
「あの空を浮かぶ事のなくなった
雲の上を走る通りに出来た
スーパーマーケットには、
額縁やカーテンの向こうの団地から
やって来る買い物客達で
賑わっている。
店先で居合わせた
同じ棟の住人同士、
顔を合わせればたちまち
噂話に花が咲く。
ここ最近
彼ら彼女らの
口に上る事はと言えば、
壁の色が塗り替えられている
小豆色の額縁の住宅の事。
壁の色そのものよりも
近々引っ越してくるであろう
持ち主が誰なのかを気にしている。
もう一つは
スーパーの向かいにある
家の屋根の風見鶏が
産んだ卵の一つから
雛が孵ったらしいと言う事。
2階の専門店街にある
クリーニング屋のおしゃべり好きの
お姉さんから聞いたと
皆が話していた。
喋り疲れたのなら
スーパーの最上階に
使わなくなったじょうろを改装した
ジューススタンドがあるから
そこで喉を潤せばいいよ。
空を浮かぶ事のなくなった雲の上、
この街で起こる出来事全てを
知っている気持ちをほんの少しだけ
味わう事が出来るのかも知れないね。
宇宙が荷台に拡がるトラックは
惑星を運搬するのには
適しているけど、
積荷はブラックホールに
吸い込まれる危険があるから
載せない方がいいと言う事は
自明の理だからか、
はたまた
青い額の奥にあるライブハウスで
楽器に羽が生えて
奏者の許から
逃げ出している事については
日常茶飯事だからなのか、
ここでは特に
誰の口にも上らなかった。」
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画用紙に水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもので、
完成後B4(257×364)サイズ程に切り取ったもの。
9月位から描き始めてはいたものの、
色々あって結局、
今月に入ってからの完成となりました。