◆「移動ポストは待ってはくれない(The Moving Post Can't Wait)」...

(ある旅行者の手記より)

「瓶詰の書斎の中に居を構える

意思ある羽ペンの作家は

今度出版する本の執筆に

熱心なあまり

期限ギリギリまで

原稿と向き合っていたようだ。

 

羽付きの速達封筒に原稿を入れて

一日に数本走る列車に

牽引される移動ポストの中に

投函しないと

締め切りまでに

大都市にある出版社の

編集者の手許に届かない。

 

書斎の向かいのドライガーデンでは

サボテンの惑星が

珍しく花を3つも咲かせている。

ここの植物の大半は

頻繁に水遣りをする

必要のないものばかりだからか、

ガーデンを管理するじょうろは

手持ち無沙汰のようだった。

  

近隣に住む人の話では

羽ペンの作家は

出版社が集まってはいるものの、

騒がしい大都市よりも

この場所に居る方が

創作意欲が湧くとの事で、

 

大層気に入っているそうだ。

 折角だから、

移動ポストが行ってしまう前に

長い間投函しそびれていた

エアメールでも送る事にしようか。

鍵付きの日記帳にも

記していない

とっておきの物語に土産話。

うっかりすれば本心が

影になって白い壁面に

映し出されてしまう前に

投函してしまおうか。」

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

(完成後)A4(210×297)サイズ程に切り取った水彩紙に

水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。

街で見掛けたドライガーデンを見て、

ふと描いてみたくなったのが切っ掛けで、

又、比較的暗いテーマの絵が続いた事もあり、

久しぶりに明るめの絵を描きたくなった...と言うのがありました。

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