◆「白い砂の街道と初夏の分岐点(White Sand Invites To The Early Summer Trip)」...

 

 

(ある旅行者の手記より)

「気温が連日のように

25℃を超える日々が続くようになる

この季節ともなると、

夏まで待ってなんかいられなくなった

C.T.W.(Colour-Trash World)中の人々が、

白い砂の街道(この記事を参照)と呼ばれる地域に散らばった

海の記憶を持った石が

随所で白い砂の上に海を描く光景を求めて

大挙して押し寄せて来る。

 

この街道を行き来するトラム自体は

街道沿いにある街や集落を結んで走る

典型的な「街道トラム」なのだが、

夏を先取りするかのような風景を

車内からのんびり眺める事が

出来ると言う事からか、

ここ数年は

どの列車も観光客でごった返すようになり、

最混雑時には積み残しが

発生している程の

混み様である。

 

街道の途中の

比較的大きな集落にあるこの駅でトラムは

そのまま真っ直ぐ街道を進む系統と

角を曲がって最寄りの幹線の駅や

ペンション街のあるエリアへ向かう系統に

分岐をする。

分岐のある曲がり角に建つ白い巻貝の駅舎は

待合所と事務所と信号所を兼ねており、

幹線の特急列車の指定席を含めた切符の発券や

行き交う列車のポイントの

切り替えを行っている。

電車の到着と同時に

乗降客や乗換客で溢れ返るホームからは、

沿線のホテルやペンション、レストランの

広告が入った渡し雲に乗り継いで、

やはり交通量の多い車道を横切って

道路の向こう側へ渡る客も

少なくないようだ。

 

電車が右折して行った

分岐点の角の雑貨店の前で

海底世界からの観光客と思しき

壮年の人魚が佇んでいた。

若かりし頃は

荒くれ者であったであろう面影が

色濃く残っていた。

昔は人魚の男と言えば、

嵐を起こして商船を襲ったりするような

荒っぽいイメージがあるのだが、

海底世界も都市化が進み、

それに伴い人魚達のライフスタイルも

すっかり変わってしまったのだそうで

「近頃の若者はなっとらん!」と

憤慨している様子だったが、

お店から出て来た奥さんに

「沢山買い物しすぎちゃったからこのバッグ持ってて。

それから、あと2~3軒お店を見て回りたいから

付き合って頂戴」と

すっかり尻に敷かれているようだった。

 

壮年の人魚の奥さんは

ふいにこんな事を呟いた:

「昔は争い事ばかりで

旅行なんて考えられなかった。

今、この人とこんな風に

お出掛けしたり旅行を楽しむ事が出来るなんて

まるで夢の中にいるみたいね。

こんな日々がずっと続けばいいわね」

―夫婦は明日、

海底都市にある自宅に

 

戻る予定なのだそうだ。」

 

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A4(210×297)サイズ程に完成後切り取った

水彩紙に水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。

描くに当たっては...

福島交通軌道線の長岡分岐点のような感じの

場所を描いてみたいとふと思い立ったのですが、
そこに以前描いた
白い砂の街道(White Sands Tells The Summer Will Come)」に

房総やハワイのような街並み・風景を組み合わせて描いてみたかった...と

言うのがありました。

尚、角にある「駅舎」は琴平参宮電鉄の

善通寺赤門駅(資料が少ないのですが...)の

駅舎の「位置(やポジション)」を参考にしました。

 

再び、外出や旅行の憚れるような情勢となって来ましたが、

何処かの世界への旅をしているような気分に

なって頂けましたら、非常に幸いです。

 

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