◆「遊園地通りに吹き続ける誘いの風(Something In The Wind @ the Street To The Wonderland)」...

「街の向こうの瓶詰の遊園地は

日没の閉園時間と同時に

コルクの栓に閉ざされる。

閉園後の瓶の上は

若者達のたまり場となっているらしく、

閉園を待ってましたとばかりに

彼らが続々と集まって来る様子が

この街からもよく見える。

あまりにも多く集まり過ぎたからなのか

先日、瓶の表面に入ったヒビが発見されて

大問題になったようで、

瓶の上には注意書きのラベルと

応急処置のテープが貼られたが、

それでも瓶の上に集まってくる者は

後を絶たないようだ。

 

「俺様が燃料切れと戦いながら

世界中を回って集めて来た

選りすぐりのものばかりだぜ」と

自慢げに語るマッスルカーの店主の

ガレージを改装したアンティーク雑貨店の店先で

女の子が手乗りサイズの小惑星を欲しがっていた。

女の子の母親はずっと難色を示していたのだが

結局、女の子の

「ぜったいに大切にするから!」の一言に折れてしまった。

その様子を、

野生化してからかなりの年月が経っているであろう

野良の惑星が

木陰から切なそうに見つめていた。

 

雑貨屋の店の前を通り過ぎて行った魔法の絨毯は

扱いこなす事が出来れば便利なのだが、

操作するのには

ある程度以上の魔法が

使えなければいけないと言う事から、

C.T.W.(Colour-Trash World)に於いては

あまり一般的ではない乗り物ではあるのだが、

人気ドラマの中で

魔法の絨毯を乗りこなす主人公の姿が

話題となり、若者を中心に

俄かに魔法の絨毯を買い求める客が増えたようだ。

通り沿いの絨毯屋の前では

今もドラマの影響を受けたと思しき若者が、

魔法の絨毯を探しに来ていた。

「(値段が)そんなに高くなくて

オレみたいに大して魔法が使えなくても、

(ドラマみたいに)カッコよく乗りこなせて

デザインもカッコいいヤツ、何か無い?」

「そんな物はある訳無いだろ」と

店主に一蹴されていた。

 

この街の風に誘われて、

追い求めても仕方の無いものを

ずっと追い求め続けていた。

長い間追い求めていたけれども

結局、何も見つからなかったし

何にもならなかった事に気が付いた。

この街に吹いている風の中には、

あの時感じていたものの片鱗が

今も見えたり隠れたりはしているけれど、

それを追い求めるような事は

きっともうしないだろう―...

そんな事を雑貨屋の店主に話していた。

「そんな風に誘われたんだったら

そいつは仕方無ぇさ。

俺だってきっと、

すぐにでも店を畳んで

どうしようもないものとやらを

地の果てまで追い求めていただろうな。

もしも何もならない事が判ったんだったら、

それはそれで悪くはないじゃないか。」

と語る店主の4灯のライトは心なしか

微笑んでいるようにも見えた。」

 

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完成後、A4(210×297)サイズ程に切り取った画用紙に

水彩紙、水彩絵の具で描いたもの。

実は、元々の絵は5年位前に描き始めていたものの、

電車以外の背景が中々しっくり行かずに、

(下絵を)描いては消して...を繰り返していたものでした。

ある日ふと「(玉電の)瀬田」のような雰囲気の街を描いてみたくなった時に、

描きかけのこの絵(の下絵)を引っ張り出して、

その後は今まで何一つ纏まらなかったのが嘘のように

スムーズに...とは言わないまでも―細部等の塗りで難航しつつも

何とか進める事が出来たのでした。

勿論、描いている内に当初の「(玉電の)瀬田のような感じ」は

見事に何処かに行きましたが。(苦笑)

 

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