◆「ツギハギだらけの色彩世界は今日も(C.T.W. Still Coloring The World)」...
(ある旅行者の手記より)
「C.T.W.(Colour-Trash World、以下C.T.W.)の
大抵の街や集落には
最低でも1つは色彩処理工場が存在しており、
そこでは
国外から運ばれて来た様々な物から色を抽出して、
この世界に存在している物質や空間(や感情)を
色彩で満たすためのカラーチップを
昼夜問わず加工し続けているのだが、
C.T.W.の首都「夢を夢見る都」の総合ターミナルから
特急と間違えて乗った準急に
およそ3時間揺られて辿り着いた
この街とて例外では無い。
山裾まで拡がる色とりどりの住宅を背に、
有翼船の止まり木もそびえ立つ
そこそこ大きいこの街を特徴づけている
鳩時計の建物は、
元々は時計台の他に灯台の役割も兼ねていたようで、
有翼船に併せて造られた空中の桟橋や
税関、検疫所等の機能も備えているのだそうだが、
その特異な外観からは
施設や機能が増えるに従って
増築して行ったであろう事が窺えた。
複数の色彩処理工場を結ぶ
カラーチップ運搬専用列車の線路脇の
空き地に停まっていた青いワゴン車が
顔なじみと話していた:
「そうそう、昨日だけど
変な事を言う人が居てね、
「物質や空間、感情をも色彩で彩るだなんて
自分達の国ではもう過去の話になっているのに」
「この世界はいつまでこんな事をやっているつもりだい?」って。
それからこうも言ってたよ、
「この地域はありとあらゆる時代遅れの
雑多な物や色が一同に会している」とか。
そりゃあそうさ。
流行らなくなったり
使われなくなったような物や色は、
先進諸国を始めとした色んな所から
この地にやって来ているんだから。
まぁ、態度から察するに
その人も先進諸国から来たんだろうけどね」
C.T.W.中の色彩処理工場は今日も稼働を続けている。
先進諸国からの
視線や呆れた声も多少気にしたりしつつ、
ツギハギだらけのこの世界を
いつものように
色彩で満たし続けるために」
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水彩絵の具、水彩色鉛筆で(完成後)A4(210×297)サイズ程に切り取った水彩紙に
描いたもの。
度々登場する「先進諸国」、
C.T.W.で加工された色彩・製品の
主だった「輸出先」、「得意先」でもあるが為に、
(「色で彩る事が時代遅れだ、と言う事も含め)
そこからの「視線」は
多少は意識はしているようです。