◆「帰郷の駅より伝える声(Homecoming People And The Mobile-Fairies @ the Station)」...

「年の瀬が近付いて来れば
ここC.T.W.(Colour-Trash World)では
どこの駅でも
故郷に向かう人達の姿で溢れかえるようになる。
この街の駅でも
大きなカバンや荷物を抱えた
大勢の帰省客が
たった今到着した特急列車から続々と降りてきた。
家族や親戚へのお土産として購入したものであろう
大都市の百貨店の紙袋や
先進諸国の電機製品と思しき段ボール箱を
抱えている人の姿もちらほら見られた。

 

「久し振り!元気だった?」
「この街も全く変わってないなぁ...」
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんにも
初めて抽出出来たこの色を早く見せたいな」
「この小型色彩抽出機、
国境の街で安く買えたんだけど、
子供達も絶対喜ぶぞ」
「あれ、前来た時より水晶の塔が増えてない?」
「...ああ、工場とかの魔力使用量が増えたとかで、
最近また何本か増えたんだよ」

バスやタクシーの乗り場や
移動式の売店、簡易食堂が並ぶ
蓄音器の駅舎の前では
再会を喜んだり
それぞれの目的地に向かう
人々の間を縫うようにして
旧式の携帯電話の妖精が
「今すぐ会いたい人と話が出来ますよ」と
機械音声を発しながら
飛び回っていた。
「どうです?
ご実家のご両親に
お孫さんの声を聞かせてあげられますよ?」
妖精は早速、
小さな子供を連れて
里帰りをする母親と思しき人物に声を掛けていた。

「あっ、お祖父ちゃん?
今駅に居るんだけど、これから
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家に行くから
待っててね」

 

思えばあまりに遠すぎる場所に来てしまった...。
自分は今一体何処にいるのかも
何処にいるべきなのかも
分からないし、
そして本当に行きたかった所は何処なのか、
本当は何を望んでいたのかすらも
分からない。
今となっては最早
帰るべき場所すら分からないけれども
出来る事なら、
二度と戻る事の無いであろう
あの頃のあの場所の人の
声を聞いてみたい―

 

「どうです?そこの貴方も
話してみたい人は居ませんか?」
携帯電話の妖精がいきなり目の前に現れた。
受話口から聴こえて来る合成音声が
得意気にこう言った:
「今は通話が出来ないような所に居る人、
何でしたら思い出の場所そのもの、
さらに追加料金をお支払い頂ければ
―勿論、相手にも何らかの通信手段があればの話ですが、
過去の人とお話が出来たり、
あなたが戻りたいと思っている"時代の声"を
聞いたりする事も出来ますよ」」


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B4(257×364)サイズ程に完成後切り取った水彩紙に
水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。

特急列車が駅に停まっているような構図は
大分前から考えていたのですが、
とある鉄道の記録動画を眺めていた時に、
新年に故郷に帰る乗客で溢れかえる駅の様子を
収めた場面を観てふと「いいな」と思って
描いてみたい...と思った事がこの絵を描くきっかけでした。

ちなみに、C.T.R.(Colour-Trash Railway)の特急は
インターシティやPanorama Ocean Express、
国外へ向かう客車特急等が運行されておりますが、
上記の特急列車以外は(ほぼ)
・白地に赤の有料特急
・白地にオレンジの一般特急(特急料金不要)

・(路線によっては)白地にターコイズの一般形車両
...が運行されております。
(※運用によっては双方が併結されている事もあります。南海の「サザン」のような感じでしょうか)
インターシティ等に較べると停車駅は若干多めです。

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