◆「拝啓 この街が大好きだった君へ(From This Town What You Loved)」...
「(前略)
お元気ですか。
お変わりはありませんか。
それともあの頃の日々が
全て夢であったかのように、
何もかもが変わってしまいましたか。
舶来品を載せた有翼船が
今日も頭上を飛び交うこの街は、
一見あの頃と何も
変わっていないようには見えますが、
実は所々で多少の変化は見られるのかも知れません。
踏切のすぐ前にある風車の前では
敷地内のレモンの木から
相変わらず爽やかな柑橘類の香りが
漂って来ます。
反対側の画材店で行われている
在庫処分セールでは、
珍しく魔法生物のメーカーから
流れて来た品物が
店頭に並べられておりましたが、
売れ行きはさっぱりのようです。
丘の上の教会に通じる
古いアーケード街は、
昼間でも相変わらず薄暗かったりしますが、
食料品等を求める買い物客で
今日も賑わっております。
隧道の真上の
児童遊園に
不時着したロケットは、
悩みに悩んだ末に
そのまま公園の遊具として
子供達の遊び場になる事を
選んだようです。
今となっては
君がこの街の全てに
一体何を夢見ていたのか、
そして君がこの街の人に
一体何を望んでいたのか
知る由もございませんが...
君は今でもこの街の事が好きですか。
この街で起きた喜怒哀楽の数々も
新たな場所で暮らす君の存在も
すっかり遠いものになってしまったけれど、
この街の人々は
色々ありますが今日も元気で暮らしています。
もしもあの頃の日々や
一つ一つの感情が
どうしても恋しくなったのであれば、
一歩だけでも構いませんから
またこの街に
足を踏み入れてみて下さい」
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A4(210×297)サイズの画用紙に
水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。
pixiv FANBOXやnoteの有料記事内でも
触れたのですが、
実は元々下絵は1枚の画用紙に描いていたもので、
当初は水彩色鉛筆で水の量を少なめにして
塗るつもりでしたが、
途中で水彩絵の具で塗った方がいい...と言う事になり、
水を多く使用する(→そのまま塗ると紙が歪む)事から、
裏面に厚紙を貼り付けました。
「紙の歪み具合」に関しましては......
「(厚紙を貼り付けないで塗るよりは)若干マシ」と言った所でしたが(苦笑)、
自分の納得の行く色合いで塗る事が出来ました。
...制作過程が制作過程なので作品状態に難ありなのですが、
本作品も(「習作」ではなく)「作品」として扱います。