◆「故郷の味、望郷の想い(Taste of Missing Home)」...

 「「ここだよここ!

ここが今この街で一番人気の店なんだよ!」

停留所前を連れたって歩く4人組の男女、

その中で一番よく喋る男の声が

夕食時を迎える街に響き渡った。

近くに住んでいると思しき

この男性の言う所に拠れば、

この店は

料理が大好きだったと言う

店主の母親直伝の郷土料理や家庭料理が

手頃な価格で楽しめると評判なのだそうで、

その男性曰く「"ツウ"向けのグルメ雑誌にも

掲載された」事から

故郷の味を求める客が

近隣のみならず遠方からもやって来るのだそうだ。

 

その向かいにある

雲を頂いた邸宅を改装した

高級そうなレストランは

且つて存在していたとある王国の

宮廷料理人を務めていた店主が開いた店で、

その王家で出されていた

宮廷料理のコースが有名なのだそうだ。

そのメニューに使用する食材も

超一流のものを

ふんだんに使用しているのだそうだが、

現存していない国や産地の

食材を用いる料理であるだけに、

(食材の)調達や

それらを用いた

往時の味の再現には

大変苦労しているとの事である。

 

「何でその国は無くなったンすか?

戦争とか革命とかっすかねぇ?」

「青空化だよ。(※「青空化」についてはこの記事を参照の事)

...ああ、

若い世代は

知らないかもしれないな...。

その国は十何年か前に

国土全体が青空と化して、

国ごと全部消えてしまったんだよ。

その場所が寿命を迎えて

青空の中に溶けて消えてしまう...と言う現象自体は、

この世界でもあり得なくないとは言え、

一つの国家程の規模のエリアが

丸ごと消滅した訳だからね。

C.T.W.(Colour-Trash World)でも流石に当時は

大きな騒ぎになったものさ。

その国の人達の多くは近隣諸国に居を移したそうだが、

国王とその一族は、

国を守る事が出来なかった事を

恥じたのか

それとも申し訳なく思ったのかは知らないが、

退位宣言をした後

国民の前から姿を消して、

何故か遠く離れた

このC.T.W.に来ていると言う噂があった。

...あくまでも噂だから真相は判らないのだが、

この店の(元)宮廷料理人は

恐らくその噂を頼って国王一族を追って

ここまで来たのだろうね、

その数年後にこの場所で店を開いた訳だ。

今でも時々店の前を通る度に

空を見上げているのを

見掛けるが、

やっぱり故郷が懐かしいんだろうな―」

 店のバルコニーからは今日も

夜空を見上げる店主の姿を

確認する事が出来た。

無数の星屑が散らばる

あの空の中に、

そして人々の記憶の中からも

忘れ去られようとしている故郷の存在を、

彼はこれからもきっと

料理を通して伝え続けるのだろう。

 

「それじゃあ、

そのお店に変更して

そこで皆で食べましょうか」

「いや、それにはちょっと懐具合が...」」

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

写真四切サイズ(254×305)のパネルに水張りをした水彩紙に

水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いて

完成後に(B5サイズよりは若干縦が長い)

手持ちの額(203×254位。恐らくは六切サイズ程?)に合わせたサイズに切り取ったもの。

 

...実は元の絵は10年以上前にある展示に参加するために

着手こそしていたものの、

諸事情あって展示の参加を取り止めて

ずっとそのままになっていた絵でした。

その後、大分時間が経って

今年のGW位に、ふと「故郷の味」について考えていた時に

上記のストーリーが思い浮かび、

それをテーマにした絵であればこの(描きかけの)絵が適任であろう...

と言う事で、引っ張り出して―

紙に付着した顔料が流石に古くなっていて

思わぬ箇所で塗りに苦労はしたものの、

10年(以上)越しの完成となったのでした。

 

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