◆「海に焦がれるモノ達が集う、かりそめの港(Those who miss the true sea on the imitation sea)」...
(ある旅行者の手記より)
「海に見立てた青い絨毯が、
一段低くなっている地面に
ただ敷かれているだけの
かりそめの海を臨む
この停留所の前で、
離合するトラムの車両が、
すれ違いざまに
会話を交わしていた。
「ここの停留所、
操舵輪が
何故付いているのか
いつも不思議に思っているんだが、
ある日突然
何処かに行ってしまうって事は
ないだろうな」
「それは停留所の気分次第だろうな。
今は停留所のままで居てくれているが、
何せ操舵輪が付いているんだ、
ここからかりそめの青い海を
眺めているだけでは
満足出来なくなって、
いつか本物の海に
出る日が来るのだろうな」
この場所にメッセージの入ったボトルが
流れ着いたのは
大分前の話なのだが、
受け取り手が誰も現れないまま
時ばかりが過ぎてゆき、
ついにはレストランに改装されてしまった。
最近になってからボトルは、
「もしかすると流れ着くべき場所を
間違えたのかも知れない」などと
思い始めているようであるが、
時既に遅しである。
誰かが置いて行ったのか、
はたまた自力でやって来たのか、
そもそもいつから
ここにこうして"存在"しているのかが
分からないのだが、
この場所に鎮座している
海に焦がれる青い石の原石は、
気温がまだ25度を
超えていないと言うのに、
海に焦がれすぎるあまり、
周囲にささやかな海を作り出して
車道を水没させていた。
その様子を灯台が、
こちら側を
心配そうに覗き込んでいた。
「毎日朝から晩、
雨の日も雪の日も、
起点から終点まで
ここの系統を
こうして行き来する度にいつも
思うんだが、
この街には
海と言うものに焦がれているヤツが
あまりにも多すぎるな。
なぁ、アンタもそう思うだろう?」
客扱い中のトラムの車両が、
反対側の停留所に停車中の
トラムの車両に話を振った。
「...あ、ああ、そうだな...」
ここが本物の海であると
信じて疑わない舟の
甲板の上にとまっている
おしゃべりなカモメの話に拠れば、
話を振られた方のトラムの車両もまた
実は海に焦がれているらしく、
かりそめの海を時折眺めては
何処か物憂そうに、
前照灯を鈍く光らせる姿が度々
目撃されているのだそうだが、
この事は他の誰かには
言わないでおいた方が良さそうである」
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In this city with a harbor overlooking an imitation sea,
everyone, including the streetcar stop,
was longing for the real sea.
(※BingChat、DeepL翻訳を使用・一部改変しております)
(BingChat, DeepL translation used and partially modified)
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(完成後)A4サイズ(210×297)程に切り取った水彩紙に
水彩絵の具、水彩色鉛筆で描いたもの。
尚、これまで描いてきた
絵のキャプション文の冒頭には、
今回のように
(ある旅行者の手記より)等の文言が
記されていたり、
或いは特に何も記されていなかったりしていたとは
思いますが、
冒頭に特に何の()内の記述が無い文章は
実は「鉄道車両が語っているもの」として
書いておりました。
今後も冒頭に特に()内の記述が無い
キャプション文は
「鉄道車両の視点で語られている」ものとして、
書いていく所存です。